弁理士法人MSウィード

日本と中国におけるAI関連発明の判断比較①(発明の該当性)

トピックス

2023.12.5

特許

日本と中国におけるAI関連発明の判断比較①(発明の該当性)

2023年11月30日に、特許庁のHPに「中国とのAI関連発明に関する比較研究について」という報告書が掲載されました。

中国とのAI関連発明に関する比較研究について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

AI関連発明は、いずれの技術分野においても出願されることになり、特許取得するための重要な判断基準になりますので、各国の動向を注視する必要があります。

第1弾として、「発明の該当性」にスポットを当て、掲載された報告書の内容の紹介、及び実務上の注意点を記載していきます。

 JPO(日本国特許庁)の判断方法

  • ステップ1では、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるかが判断される。当該技術的思想の創作であれば「発明」に該当する。
  • ステップ2では、ステップ1で当該技術的思想の創作でないと判断された場合、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているかが判断される。
    言い換えると、ステップ2では、「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の処理装置又はその動作方法が構築」されているかが判断される。

 CNIPA(中国国家知識産権局)の判断方法

  • ステップ1では、「技術的特徴」の有無が判断される。「技術的特徴」がなければ専利法25条1項2号に規定される精神活動の規則及び方法に属し、発明該当性がないと判断される。
  • ステップ2では、ステップ1で「技術的特徴」がある場合に、「技術課題」、「技術的手段」、「技術的効果」の3つの重要な要素を更に検討し、全体として専利法2条2項の技術的解決策に属するかが検討される。

 判断基準の比較及び事例における日中の差異

  • JPOでは、2条1項に法定された「発明」の積極的定義からのみの審査が実施される。また、「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の処理装置又はその動作方法が構築」されていると認められると、使用目的が技術的か否かに関係なく、発明該当性が認められる。これに対して、CNIPAでは、ステップ1で「技術的特徴」の有無を重要視して専利性のない対象に該当するかが判断され、その後に3つの重要要素を考慮して発明該当性が判断される。
  • 事例における発明該当性の最終結果は、複数の事例で一致しているものの、一部で相違するケースが存在する。
  • 「糖度データ(事例A-2)」の事例について、JPOでは情報の単なる開示であって発明に該当しないと判断されるが、CNIPAでは「技術課題」、「技術的手段」、「技術的効果」が考慮され、発明に該当すると判断される場合がある。ただし、CNIPAでは権利化範囲の明確定義のために「糖度データの収集方法」等に変更する必要がある。
  • 「数学モデルの構築方法(事例A-3)」の事例について、JPOでは「コンピュータによるソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段または具体的手順によって実現している」と判断されるが、CNIPAでは「技術的課題を解決するものではなく、自然法則に従った技術的手段を適用するものでもなく、技術的効果を得るものでもない」として発明該当性が認められないと判断される。

 実務上の注意点

  • 日中のどちらの判断が厳しいということは言い切れないものの、JPOでは「ソフトウエアとハードウエア資源との協働」が請求項に表現できていれば発明として認定されるため、CNIPAの判断と比較して、形式的な記載を工夫することで発明に該当させることができると考える。
  • 一方、CNIPAでは技術的特徴や技術的な要素(課題、手段、効果)が考慮されるため、JPOよりも内容の実態的な部分が考慮され、ケースによっては判断が厳しくなると考える。
  • しかしながら、CNIPAでは技術的の要素を明確にすることで、JPOのような「ソフトウエアとハードウエア資源との協働」が表現されていなくても、発明に該当すると判断されることもあり、発明特定事項の限定を減らせる可能性があると考える。
  • 中国における権利化も視野に入れる場合には、日本出願の段階で「ソフトウエアとハードウエア資源との協働」という形式的な記載のみを注視するのではなく、技術的特徴、及び3つの技術的な要素を検討し、発明内容が抽象的な方法と判断されないようにクレーム及び明細書を記載する必要があると考える。